ファクタリング利用後の会計処理(仕訳)はどうする?具体例でわかりやすく解説

ファクタリング利用後の会計処理(仕訳)はどうする?具体例でわかりやすく解説

ファクタリングで資金を調達できたは良いものの、経理担当者から「この入金、勘定科目は何で処理すれば良いのでしょうか?」と質問され、明確に答えられず困ってしまった。
そんな経験はありませんか。

こんにちは。
元銀行員で、現在は中小企業の経営コンサルタントをしている坂本と申します。
これまで500社以上の決算書を見てきましたが、ファクタリングの会計処理を正しく行えている企業は、実はそれほど多くありません。

この記事を読めば、あなたはファクタリングの正しい会計処理(仕訳)を完全にマスターできます。
それだけでなく、私が銀行員時代に見てきた「融資担当者の視点」から、なぜその会計処理が重要なのか、将来の銀行融資にどう影響するのかという本質的な理由まで理解できるはずです。

正しい知識が、あなたの会社を未来の危機から救います。
さあ、一緒に見ていきましょう。

なぜファクタリングの会計処理は重要なのか?銀行融資への影響

まず結論からお伝えします。
ファクタリングの会計処理を正しく行うことは、将来の銀行融資をスムーズに進めるための重要な布石です。

多くの経営者は、目先の資金繰りに追われ、会計処理を軽視しがちです。
しかし、その小さな間違いが、後々大きな命取りになりかねません。

正確な会計処理は「会社の信頼性」の証明

銀行が融資審査を行う際、決算書は会社の健康状態を示す「健康診断書」のようなものです。
そこに記載されている一つひとつの数字が、正確で、取引の実態を正しく反映していることが大前提となります。

ファクタリングという金融取引を行った事実を、会計ルールに則って正確に記載することは、経営の透明性を示すことに他なりません。
これは、銀行に対して「私たちは会計を疎かにせず、信頼に値する企業です」とアピールする絶好の機会なのです。

銀行が見ているのは決算書の「数字の裏側」

私が銀行員だった頃、必ず確認していたポイントがあります。
それは、損益計算書に計上されている「支払手数料」や「雑損失」の中身です。

融資担当者はこう考えます。
「この『支払手数料』、一体何に使った費用なのだろう?もしや、実態は借入の金利ではないのか?」

もし、あなたがファクタリングの手数料を「支払手数料」で処理していた場合、銀行は内訳が不明なコストと判断します。
最悪の場合、金利の高いノンバンクからの借入を隠しているのではないか、と疑念を抱く可能性すらあるのです。

間違った仕訳が将来の資金調達を困難にする可能性

一度生まれた疑念は、簡単には払拭できません。
決算書の数字に不明瞭な点があれば、銀行は追加の説明資料を求めたり、融資の判断を慎重にしたりします。

結果として、融資実行までの時間が長引いたり、最悪の場合は融資が見送られたりするケースも少なくありません。
たった一つの仕訳ミスが、本当に資金が必要なタイミングで、あなたの会社の選択肢を狭めてしまうリスクがあるのです。
だからこそ、ファクタリングの会計処理は、取引の実態を正確に示す方法で行うべきなのです。

ファクタリング会計処理の基本|押さえるべき3つの勘定科目

では、具体的にどのように会計処理をすれば良いのでしょうか。
複雑に考える必要はありません。
まずは、基本となる3つの勘定科目をしっかり押さえましょう。

① 売掛金:譲渡する債権

これは、取引先に対して商品やサービスを提供し、後日代金を受け取る権利(債権)のことです。
ファクタリングは、この「売掛金」をファクタリング会社に売却(譲渡)することで、早期に資金化する取引です。
仕訳の出発点となる最も基本的な勘定科目と言えます。

② 売上債権売却損:ファクタリング手数料の正しい処理

これが最も重要なポイントです。
ファクタリング会社に支払う手数料は、「売上債権売却損」という勘定科目で処理するのが原則です。

なぜなら、ファクタリングは売掛金という「債権」を額面よりも安い価格で「売却」する取引だからです。
その際に生じた差額(=手数料)は、債権を売却したことによる損失、と考えるのが会計上の正しい考え方となります。
この勘定科目を使うことで、取引の実態を誰が見ても正確に理解できるのです。

③ 未収入金または預け金:入金前の債権額

ファクタリング契約が成立してから、実際にお金が振り込まれるまでの間、一時的に使用する勘定科目です。
売掛金をファクタリング会社に譲渡した時点で、その債権はもはや自社の「売掛金」ではありません。
しかし、まだ入金されていないため「普通預金」でもない。

この状態を示すために、「未収入金」を使います。
これは、「本来受け取るべきお金がまだ入金されていない状態」を明確にするためのものです。
なお、2社間ファクタリングで、取引先からの入金を一時的に預かる場合は「預り金」という科目を使うこともあります。

【ケース別】ファクタリングの仕訳を5つのステップで徹底解説

それでは、具体的な事例をもとに、仕訳の流れをステップ・バイ・ステップで見ていきましょう。
ここでは、最も基本的なパターンを解説します。

前提条件:100万円の売掛金を、手数料10%でファクタリングする場合

  • 取引先への売掛金: 100万円
  • ファクタリング手数料: 10万円 (10%)
  • あなたの会社への入金額: 90万円

この条件で、どのように仕訳を行うか解説します。

ステップ1:売掛金の発生

まず、取引先に商品を販売し、売掛金が発生した時点の仕訳です。
これは通常の取引と何ら変わりありません。

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
売掛金1,000,000売上1,000,000

ステップ2:ファクタリング契約の締結(売掛金の譲渡)

次に、この100万円の売掛金をファクタリング会社へ譲渡する契約を結びます。
この時点ではまだ入金はありませんが、会計上は売掛金が消滅し、代わりに「未収入金」が発生します。

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
未収入金1,000,000売掛金1,000,000

ステップ3:手数料と入金額の計上(2社間・3社間共通)

後日、ファクタリング会社から手数料10万円が差し引かれた90万円が、あなたの会社の口座に入金されます。
このタイミングで、ステップ2で計上した「未収入金」を消し、入金額と手数料を計上します。
ここで登場するのが「売上債権売却損」です。

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
普通預金900,000未収入金1,000,000
売上債権売却損100,000

3社間ファクタリングの場合、取引先が直接ファクタリング会社へ支払いを行うため、あなたの会社の会計処理はここで完了です。

【応用編】ケース別に見る仕訳の違い

もう少し複雑なケースも見ておきましょう。

2社間ファクタリングの場合:売掛金の回収とファクタリング会社への送金

2社間ファクタリングでは、取引先からの入金は一度あなたの会社の口座を経由します。
このお金はファクタリング会社へ送金する義務があるため、一時的に「預り金」として処理します。

1. 取引先から売掛金100万円が入金された時

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
普通預金1,000,000預り金1,000,000

2. ファクタリング会社へ100万円を送金した時

勘定科目(借方)金額勘定科目(貸方)金額
預り金1,000,000普通預金1,000,000

このように段階を踏むことで、お金の流れを正確に記録できます。

債権譲渡登記が必要な場合:登記費用の処理

ファクタリング契約によっては、債権を譲渡したことを法的に示す「債権譲渡登記」が必要な場合があります。
この登記にかかる費用(登録免許税や司法書士への報酬)は、ファクタリング手数料とは別に処理すべきです。

一般的には、以下のように処理します。

  • 司法書士への報酬: 「支払手数料」として処理します。
  • 登録免許税: 「租税公課」として処理します。

これらは「売上債権売却損」とは性質が異なる費用ですので、必ず区別して計上してください。

ファクタリングの会計処理で絶対に避けたい3つの間違い

最後に、私がこれまで見てきた中で、特に多く見られた会計処理の間違いを3つご紹介します。
これらは絶対に避けるべきです。

間違い1:手数料を「支払手数料」や「雑損失」で処理する

これは最も多い間違いです。
先ほども述べましたが、ファクタリング手数料を「支払手数料」で処理すると、銀行からは「何の費用か不明瞭」と見なされます。
取引の実態を正確に表す「売上債権売却損」、この勘定科目を必ず使用してください。

間違い2:入金された金額だけを見て仕訳をしてしまう

経理担当者がファクタリングに詳しくない場合、単純に入金された90万円だけを「売上」として計上してしまうミスが起こり得ます。
これでは、100万円の売掛金が消えないまま帳簿に残り続け、手数料も費用計上されません。
結果として、会社の財産や利益が正しく表示されず、決算書の信頼性が著しく損なわれます。

間違い3:消費税の扱いを誤解している

ファクタリング取引は、金銭債権の譲渡にあたるため、消費税はかかりません(非課税取引)
ファクタリング会社から受け取る請求書にも、手数料に消費税は含まれていないはずです。
もし、誤って手数料を課税仕入れとして処理してしまうと、納める消費税額を不当に少なく申告することになり、税務調査で指摘される可能性がありますので、十分注意してください。

まとめ

今回は、ファクタリング利用後の会計処理について、元銀行員の視点を交えながら解説しました。
最後に、重要なポイントをまとめておきましょう。

  • 正しい会計処理は、会社の信頼性を示し、将来の銀行融資を円滑にする。
  • ファクタリング手数料の勘定科目は「売上債権売却損」を使うのが鉄則。
  • 2社間ファクタリングでは「預り金」の処理を忘れないようにする。
  • ファクタリング取引は消費税非課税。課税処理は絶対にしない。

会計処理は、一見すると地味で面倒な作業に思えるかもしれません。
しかし、正確な会計処理は、自社の経営状況を正しく把握するための羅針盤であり、金融機関や取引先からの信頼を獲得するためのパスポートでもあります。

目先の資金繰りを乗り越えるためにファクタリングを利用したとしても、その後の会計処理を疎かにしてしまっては、会社の未来を危うくしかねません。
この記事が、あなたの会社の健全な経営の一助となれば幸いです。

もし、会計処理で判断に迷うことがあれば、決して自己流で判断せず、顧問税理士などの専門家に必ず相談するようにしてください。
正しい知識と専門家のサポートが、あなたの会社を守る最大の武器になるのです。